油脂産業のご案内
油脂産業とは
油脂産業といわれるものの中には、大きく分けて「製油産業」と「油脂加工産業」の2つの部門があります。「製油」は油脂そのものを製造する工業であり、「油脂加工」は製油部門で生産された油脂を原料に二次加工して油脂関連の製品を生産する工業です。両者には非常に深い関連がありますが、ここでは主に油脂加工業についてご案内いたします。
油脂産業の歴史
- 代表的な油脂加工品である石鹸(けん)は3千年前に既に存在していました。 ローマ時代の初期、サポーの丘でいけにえの羊を焼いて神に供えたとき、したた り落ちた脂が木灰(アルカリ)と混ざり合って石鹸の混合物ができました。 石鹸(soap)の名は地名のサポー(sapo)からきたと言われています。
- 日本に石鹸が渡来したのは16世紀頃(慶長年間)と言われていますが、日本の石鹸工業は明治初期にスタートしました。
- 大正に入り、国産魚油の液体油脂に水素を添加して硬化油とする硬化油工業が成立し、牛脂に代る新しい石鹸原料を作り出したばかりでなく、脂肪酸、グリセ リン、マーガリンなどの油脂加工工業発展のもととなりました。
- 天然油脂によらない新洗剤の製造は昭和10年前後から始まりましたが、第二次世界大戦後の電気洗濯機の普及とともに急激に拡大し、昭和38年には合成洗剤が石鹸の生産量を追い抜きました。
- 油脂加工・石鹸・洗剤工業は、日本の化学工業の中で重要な役割を果たしつつ、生産技術の近代化が進み、生産規模の拡大と品質の向上がはかられ、製品の多様化が進んで現在に至っています。
油脂原料
油脂原料は、「植物油」と「動物油」に大別されます。動植物油は、石油化学系の原料と異なり、天然の産物のため再生産可能原料であること、製品も環境負荷が少ないなどといった共通した特徴を持っています。
- 植物油系原料油脂
大豆油、なたね油、パーム油、ヤシ油、パーム核油、コーン油、こめ油、綿実油、ごま油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、オリーブ油、あまに油、ひまし油、桐油 - 動物油系原料油脂
牛脂、豚脂、魚油
油脂製品
油脂製品は、「食用加工油脂」、「油脂化成品」、及び「洗剤・石鹸・香粧品」の三つに大別されます。 食用加工油脂と洗剤・石鹸・香粧品は、直接私たちの生活の場で使われます。 それに対して油脂化成品は、原料や添加物として、塗料・インキ、繊維・染色加工、ゴム・プラスチック、紙・パルプ、鉄鋼・機械金属、土木・建築、鉱業、農業、石油、燃料、化粧品、医薬など、多くの産業で役立っています。
- 食用加工油脂
食用硬化油、マーガリン・ショートニング、精製ラード、マヨネーズ・ドレッシング - 油脂化成品
脂肪酸、グリセリン、天然高級アルコール、界面活性剤、可塑剤 - 洗剤・石鹸・香粧品
洗剤(衣料用・台所用)、医療用石鹸、化粧石鹸、シャンプー・リンス
油脂は非常に用途の広い物資で、食品以外に、化学原料としても有能な働き手です。従いまして、油脂加工メーカーには食品メーカーと化学品メーカーを兼ねて いる会社も多く、特に大手メーカーにその傾向があります。また、ファインケミカル分野の化学工業製品や化粧品などを生産するメーカーも多くあります。
油脂産業の特徴
油脂産業は比較的安定した産業ですが、いくつかの特徴があります。
- 油脂は、原料、製品とも国際相場商品で価格の変動が激しい
油脂の原料は大部分が海外に依存し、しかも農産物が多いので、豊作、凶作などの自然条件によって大きな影響を受けます。価格については、変動の激しい国際相場で入手しなければなりません。 - 油脂は非常に種類が多く、きわめて代替性に富んでいる
食用の場合、これでなければならないという油種が極めて少なく、工業用の場合も、価格や品質の点で折り合わなければ化学合成品で変えられてしまいます。 - 油脂産業は、小規模で脇役的存在である
油脂製品は、家庭用・工業用とも、概して副食品、副資材ないし添加剤として利用されます。いわば脇役的存在で、主役になることは少ないですが、私たちの快適なくらしにとって不可欠のものであることは間違いありません。